株主総会で、最も長い時間を費やすのが決算報告ではないでしょうか。
それまで円滑に進んできた議事が、ここに来て一気に停滞して、居眠りする株主もいることでしょう。筆者がオブザーバーとして出席した何社かは数字を全て読み上げていましたが、さすがにこれは皆ぐったりしていましたね。かといって、お金の使い道に厳しい株主もいらっしゃいますので、あまり過度な省略することもできません。
そこで、提案するのが、「経理部長の財務報告能力アップ」です。
決算書の要点を押さえつつ、論理的な注釈を入れながら説明すると、時間の節約にもなりますし、株主も質問しやすい雰囲気になると思います。
決算書の各書類を割り切って「縦割り」で説明する!
貸借対照表/損益計算書/株主資本変動等計算書/個別注記表
通常では、株主総会の招集通知に同封する議案書に、決算書一式が添付されています。近年は、事前に一読して質問を事前に受け付けることから、決算報告を簡略化させている場面をよく見ます。
「既に皆様に配布しており、目を通して頂いているかと存じますので、割愛しながら報告させて頂きます。」
これに対して「そんなもの見てないから、詳細に説明しろ!」などという株主はそうはいないと思います。
監査役がいる会社であれば、株主総会の前に監査を受けていますので、ある程度の簡略化は正常と考えられます。監査役は経営側ではなく株主側の立場であるので、株主の刺客が先に見ているというイメージです。
「後先になりますが、適正な監査手続きを経ておりますので、割愛しながら報告させて頂きます。」
上記以外の会社でも、株主が許せば簡略化も適正ですので、時間的制約一本で承認を頂くしかないでしょう。しかも、決算書は結果ですので、承認しないということは結果として、通常ないこともあります。
「時間の制約もありますので、通常経営と考えられるものは割愛させて頂きまして、特筆すべきものに限り報告させて頂きます。」
まず、書式の目的を説明しましょう。なかなかこれをしている会社はありませんが、「丁寧に説明しようとしてくれている」と誠実なイメージを与えることが期待できます。以下の書類についても同様です。
「まず、貸借対照表は、当社決算である令和3年3月31日時点の資産および負債の状況を示すものです。」
報告すべきものは、新たに設備投資した資産や除去した資産、新たな負債や完済した負債でよいかと思います。会計ソフトに「固定資産一覧表」や「固定資産台帳」があれば印刷しておいてもよいでしょう。
「今年度につきましては、新たな設備投資や借り入れは行っていないため、減価償却による価値の減額や元本返済による記載金額の減少はありますが、その他事項は割愛させていただきます。」
最後は、純資産の部の説明で閉じましょう。
「純資産の部の繰越利益剰余金につきましては、次に報告する損益計算書の当期純利益が転記されたものとなっております。以上、貸借対照表の報告を終わらせて頂きます。」
まず、この書類の目的について説明します。
「次に、損益計算書は、当社事業年度である令和2年4月1日から令和3年3月31日の期間における単年度の営業成績等を示すものです。」
個別の科目の説明については、時間的制約を理解して頂き、特筆すべきものがない場合は、会社で決めたルール、例えば前年比30%以上の増減のあるものに限って説明すればよいかと思います。
「個別の科目の説明については、時間的制約上、特筆すべきものがない場合は、当社の開示ルールにより、前年比30%以上の増減のあるものに限り、説明させて頂きます。」
営業利益は、本業の営業成績を示すものですので、担当部長あるいは、担当取締役に説明を求めましょう。国会と同じですね。
経常利益は、営業利益に加減する財テクなど本業以外の収支ですので、従業員レベルでは把握できないのが通常ですので、代表取締役に説明を求めましょう。
まず、この書類の目的について説明します。
「次に、株主資本変動等計算書は、損益計算書と同じく令和2年4月1日から令和3年3月31日の期間における株主資本、分かりやすく言えば株価の増減を示したものです。」
この株主資本変動等計算書は、基本的に会社で数字を操作できるものではないので、その旨を説明して閉じましょう。
「こちらは、増資や減資でもない限り、先ほどの損益計算書の当期純利益、すなわち貸借対照表の繰越利益剰余金の金額がそのまま加減されたものになり、当社役員によって恣意的に操作できるものではありませんので、これで次に進めさせて頂きます。」
まず、この書類の目的について説明します。
「最後に、個別注記表は、これまでの計算書類について、特筆すべき事項を注記するもので、中小企業の会計指針に記載すべき事項が列挙されていますが、顧問税理士の見解によると、当社のような一般的な会社では、この程度の記載で足りるようです。」
参考(中小企業の個別注記表記載項目)
重要な会計方針に係る事項/会計方針の変更に関する注記(省略可)/表示方法の変更に関する注記(省略可)/誤謬の訂正に関する注記(省略可)/株主資本等変動計算書に関する注記/その他の注記(省略可)
この注記表も、恣意的に会社で内容を書き換えるものでもないので、その旨を説明して閉じましょう。
「こちらにつきましても、当社役員によって恣意的に操作できるものではありませんので、これで終わらせて頂きます。」
今回は、手短に概要を説明することを重視して解説してみました。「分からないから省略しているのか?」という疑いの目ではなく、「しっかりと理解して重要度が低いから割愛しているんだな!」というように、好印象を持って頂けるフレーズを紹介してみました。
今後「こういう質問にはどう答えたらいい?」というものは、ファックスにて質問頂けましたら、このページに反映させ、充実させたいと考えています。